研究分野の概要
金沢大学ダイナミックデザイン研究室では,振動工学・音響工学を基礎に,動的システムを対象とした研究を行っています.
【振動・騒音の分析】機械の故障や破損の原因究明と防止策の検討,人体への悪影響の考察.
【振動・騒音の制御技術】有害な振動や騒音を軽減するためにはどうすれば良いか?
【振動現象の利用】振動現象のうまい利用方法はないか?(発電や搬送など)
研究室の名称は,ダイナミクス(動力学)をデザイン(設計)することに由来します.
振動・音響解析
有限要素法を用いた動的応答解析
モータやポンプ等の回転機械に発生する振動現象を解析し,振動の原因解明や防振対策を検討しています.また,楽器等が発する音と振動との関連を調べたりしています.左図はモータ固定子鉄心,右図はけいす(仏具)のモード解析結果です.
機械システムの振動解析
例えばプレス機械のように,加工時に発生する大きな振動が問題となるものを対象に,簡略な数学モデルを構築し,振動を低減する手法について検討しています.
振動・音響制御
振動のパッシブ制御(振動子の衝突を利用した制振)
振動子を被制振体に取り付けて,両者の間に生じる衝突現象を利用することで,被制振体の振動を減衰させる装置に関する研究です.シンプルな構成で振動の抑制が可能です.
スマート材料(MRE等)によるセミアクティブ制御
磁気粘弾性エラストマ(Magnetorheological Elastomer,MRE)はエラストマ内に磁性粒子を分散固定させたもので,外部磁場を加えることによって見かけの弾性率を変えることができる素材です.各種の振動制御装置をはじめ,ハプティックインタフェイス機器等への応用を検討しています.
騒音のアクティブ制御
能動騒音制御(Active Noise Control,ANC)は,空間を伝わる騒音に対して,制御スピーカから生成した音をぶつけることによって,騒音を打ち消す技術です.ダクト内騒音や隔壁伝達音などに対するANCの研究を行っています.
音響メタマテリアル
音響メタマテリアルとは,音に対する特異な物性を人工的に再現した仮想的な伝達媒体のことであり,音の伝播特性をコントロールすることによって様々な応用が期待される技術です.当研究室では音波を偏向させるメタマテリアルの研究に取り組んでいます.
その他ダイナミクス
ゴルフボールの衝突特性に関する研究
ゴルフ競技においては,ボールのコントロールや飛距離に関わる重要な要素として「スピン量」,「打ち出し速度」及び「打ち出し角度」の3つが挙げられます.本研究ではボールとクラブとの衝突特性の解明を目指した取り組みを行っています.
振戦の制御に関する研究
振戦とは,筋肉が収縮,弛緩を繰り返すことによって人間の手足に生じる不随意運動を指します.健康な人にも,目には見えない小さなレベルの振戦が観測されます.医師が顕微鏡下で手術する際などには,わずかな震えであっても作業に影響するため,その抑制が可能な装置の開発に取り組んでいます.
振動発電の研究
IoT社会への期待が高まりつつある中,大量のセンサや通信システムを支えるための地産地消型電源システム開発が重要になっています.当研究室では環境中の振動源からエネルギを回収する振動発電デバイスの開発を行っており,高発電量化及び小型化を目指しています.